曲作りは始まりました。
最初にまず舎子太鼓が演奏できるような曲という事を考え、それをケイタ君の生き様のようにポップで優しく軽やかなものにして行こうと考えました。太鼓というのは日本伝統の楽器であって決してポップなものではありませんので試行錯誤が続きました。そうやって色々な形を作っては消し、本当に悩みながら作っていました。結局なんだかんだで一年かかってしまいましたが、やっと完成にこぎ着ける事が出来ました。
聞かれた関係者や皆様方は「こ〜来るとは思わなかった」ともおっしゃていたのでちょっと心配です。
しかし、その曲を養護学校の贈呈式でご両親が学校へお渡したところ、校長先生から「僕たちもバンドを作ってこれを演奏したい」と言われたそうで、ご両親もたいそう喜んでくれました。
それを聞き、私は本当にほっとしました。音楽は個々の趣味があるから正直心配だったのです。
舎子太鼓の方は僕の想像をもっと上回りこの「どんぐりの行進」をサンバに仕上げたそうです(爆)
子供達っていうのは天才ですね。「天山さん怒るだろーなー」って言いながらみんなで少しずつサンバに仕上げたそうで、私は感心していしまいました、すでにこの曲で子供達は楽しんでいるのです。それもサンバという明るい曲調で、私が作った曲の意味をしっかり分かっているかのようです。曲の途中、ブレイクするところがあるけれど、そこで子供達が「サンバ!」って叫ぶんですよ。盛り上がるアレンジです。
そうやって盛り上がってるところにご両親から新たな提案がありました。
「歌をつけて下さい、歌がついたらきっと素晴らしい曲になるから」との事です。
これはインストのために作った曲、どうしたものかとまた思案にくれていました。
のちに完成してから思ったのですが、確かに歌にした方が良かった作品なのかもしれません。
曲を聞いたご両親は純粋に「歌をつけてたら良い」と思われたのでしょう、確かに私はこの曲を作っている最中歌いながら作っていました、ご両親はそれを無意識に見破っていたのかもしれません。
とにかく歌をつけてみようと思い、まず頼んだのが作詞を担当した千崎さん。
彼は映像作家として質の高い仕事をしている映像の職人みたいな人で、また音楽にもかなり精通して事もあり、詩もクォリティーが高いものが出来ると予想できました。歌を歌う人は、よく助けて頂いている伊那市出身のプロピアニストの春日優子さんに頼んでみたところ、少年少女合唱団のプロ合唱団があるという事でこれも解決し、録音スタジオはどうしようと考えていたところ、CD「西へ」に関わった東芝EMIの人たちが、たまたま伊那市に来る事があって、その時に東芝さんにやってもらえればミキシングも機材も全てメジャーレベルの事が出来るとは思っていましたが、さすがに頼みにくかったですす(汗)ところが彼らが来た時には養護学校のイベントにも参加してくれて、最初は驚いていましたが、すぐに慣れて子供達と遊び出し、そんな姿を見て頼んでみると「いいじゃないですか、やりましょう!」と一言で決定です。
今回は本当に人の繋がりに助けられました。そうやって、少しづつ、人と人の繋がりをたぐりながらやって行ったので、時間はかかりましたが、これも宿命だったような気がします。このように、この作品は自然な流れに乗って出来上がっていったのですが、その後、自分の日本コロムビアからのデビューもあり、すぐには出来ませんでした。
そうこうしてるうちに状況は変わってしまいます。期待してた少年少女合唱団は解散し、歌手もなかなか決まりません。この時も春日さんが助けてくれましたね。最後に山内雅子さんという歌手を春日さんより紹介していただいたのですが、この人の声がばっちりハマり、本番でも歌って頂く事となりました。山内さんも私の要求によく応えがんばってくれました。彼女は筋金入りのピアニストであってピアノや歌を教えたりもしている方で、歌に彼女の内面がよく出ていて、今回の企画にバッチリ合っていたと思います。ベースは以前に知り合っていた佐藤鉄也さんです。彼は都内ライブハウスをギグしたり色々な人のレコーディングにも参加しているプロベーシストです。そうやって完成した曲をネットで知り合った絵の先生であるTOTOTOさんに送りイラストを描いてもらいました。このTOTOTOさんの絵と僕の出会いは、とある有名なホームページのお絵かき掲示板で、重い病の子供を応援する彼女の絵を私が見た事がきっかけです。普段イラストの仕事もされている彼女の絵が、私の心の奥に何かを語りかけ、どうしてもこの人にイラストをお願いしたくなったのです。
連絡すると彼女は快諾してくれ、このCDのジャケットが完成しました。何度かの書き直しに時間のない中応じてくれて、私の望んでいたジャケットが出来上がりました。
どんな仕事もそうですが、出会いというのは素晴らしいものですね。
まるで何かの糸に引きつけられるように、惹かれあって集まって来る仲間達、これもケイタ君の引き合わせだと私は信じています。本当にケイタ君にありがとうという気持ちでいっぱいになりました。
これが「どんぐりの森」の制作のお話です。本当に長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。それと、関わって頂いた関係者の皆様には深く御礼申し上げます。
どうも、ありがとうございました。 |